矯正治療中は、ブラケットやワイヤー、マウスピースといった装置が口の中に存在するため、歯ブラシが届きにくい部位が増え、プラーク(歯垢)が蓄積しやすい環境になります。プラークが放置されると歯肉炎・虫歯が発症し、最悪の場合は矯正治療の中断を余儀なくされることもあります。
当院・広島タワー歯科・矯正歯科では、毎回の調整時に必ず口腔衛生状態を確認し、歯肉炎やプラーク蓄積が見られれば丁寧なブラッシング指導を行っています。「矯正を安全に完了させること」と「口の健康を守ること」を両立させるのが当院の方針です。
矯正中に口腔衛生が悪化しやすい理由
ワイヤー矯正の場合
- ブラケット周囲:歯とブラケットの境目にプラークが溜まりやすく、ブラシが届きにくい
- ワイヤー下:フロスが通りにくく、歯と歯の間の清掃が困難になる
- バンド(奥歯の輪状装置)周囲:歯肉との境目に汚れが溜まりやすい
マウスピース矯正の場合
- アタッチメント周囲:歯面に接着したアタッチメント(突起)の周囲にプラークが残りやすい
- アライナー内部:装着中は唾液による自浄作用が低下し、細菌が繁殖しやすい
- 食後の装着:食後すぐに装着すると食物残渣がアライナー内に閉じ込められ虫歯リスクが上がる
これらのリスクは矯正治療の宿命ともいえますが、適切な口腔衛生管理と定期的なプロフェッショナルチェックで大幅にコントロールできます。
当院の口腔衛生チェック・指導の内容
① 毎回の調整時の口腔内視診
調整のたびに歯肉の状態(発赤・腫脹・出血の有無)、ブラケット周囲・歯頸部のプラーク蓄積量を視診で確認します。患者さまに気づいていただけるよう、鏡を見ながら一緒に確認する場面も設けています。
② プラーク染色による可視化(必要時)
プラークが多い患者さまや、磨き残しの自覚が薄い患者さまには、プラーク染色液を使って汚れを赤く染め出し、「どこが磨けていないか」を視覚的にお示しします。自分の口の中を鏡で確認することで、ブラッシングへの意識が大幅に高まります。
③ 個別ブラッシング指導
矯正中の歯磨きは通常より複雑です。当院では患者さまの装置の種類・磨き残しの部位に応じて、以下を個別指導しています。
- 矯正用歯ブラシ(Vカットブラシ等)の使い方:ブラケットをまたいで歯肉側・歯冠側をそれぞれ磨く方法
- 歯間ブラシ・フロススレッダーの使い方:ワイヤー下にフロスを通すための補助器具の使用方法
- タフトブラシの活用:ブラケット周囲・奥歯のバンド周囲など細部の清掃
- 洗口液・フッ素配合歯磨き剤の活用:抗菌・再石灰化効果で虫歯予防を強化
④ 全症例へのフッ素塗布
当院では矯正治療中の全患者さまに対し、毎回の調整時にフッ素塗布を実施しています。フッ素は歯のエナメル質を強化し、酸に対する抵抗性を高める効果があります。矯正中は虫歯リスクが上がるため、このプロフェッショナルフッ素塗布が重要な予防措置となっています。
歯肉炎が起きてしまったときの対応
調整時に歯肉炎(歯肉の腫れ・出血・発赤)が確認された場合、当院では以下の対応を行います。
- 程度の評価:軽度の歯肉炎(プラーク性)なのか、より進行した歯周炎なのかを診査します
- ブラッシング指導の強化:重点的に磨けていない部位を特定し、その場で指導します
- スケーリング(歯石除去):歯石が付着している場合は除去します(矯正装置があっても施術可能な範囲で対応)
- 歯周専門医への紹介:歯周炎が進行しており矯正治療継続が困難と判断された場合は、歯周治療を優先します
- 矯正の一時中断検討:重度の炎症がある状態での矯正継続は歯周組織を傷める恐れがあるため、炎症が改善するまで矯正の進行を停止することがあります
「矯正治療を止めたくないから歯周病を我慢する」という考えは非常に危険です。健康な歯周組織のうえに矯正治療が成立するため、歯肉の健康は矯正の大前提と当院は考えています。
矯正中の口腔衛生を維持するためのポイント
| タイミング | 推奨ケア |
|---|---|
| 毎食後 | 歯ブラシ(矯正用)+タフトブラシで丁寧に磨く |
| 就寝前 | フロス(またはフロススレッダー)+フッ素配合歯磨き剤でしっかりケア |
| 外出先 | 携帯用歯ブラシで食後の大まかな汚れを除去。うがいだけでもプラーク減少に有効 |
| マウスピース装着前 | 必ず歯磨き後に装着。食後そのまま装着しない |
| アライナーのケア | ぬるま湯+専用クリーナーで毎日洗浄。熱湯は変形の原因になるため不可 |
広島で口腔衛生管理も含めた矯正治療を受けるなら
院長の丸川雅弘は広島大学歯学部を卒業後、広島大学歯学部矯正歯科に所属し、専門的なトレーニングを積んできました。矯正治療中の口腔衛生管理は見落とされがちですが、当院では「歯を動かすこと」と「歯と歯肉を守ること」を同じ優先度で取り組んでいます。
「矯正中に虫歯になってしまった」「歯肉が腫れて心配」という方も、まずはお気軽にご相談ください。現在の状態を確認したうえで、最善の対応をご提案します。
まとめ
- 矯正治療中はブラケット・ワイヤー・アタッチメントの影響でプラークが蓄積しやすく、歯肉炎・虫歯のリスクが通常より高まります。
- 当院では毎回の調整時に口腔内視診・プラーク確認・個別ブラッシング指導・フッ素塗布を実施し、口腔衛生の悪化を早期に発見・対処しています。
- 歯肉炎が確認された場合は段階的に対応し、必要であれば矯正の一時中断も含めた判断を行います。歯周組織の健康は矯正治療の大前提です。
- 毎食後の歯磨き・就寝前のフロス・マウスピース装着前のブラッシングなど、日常の自己ケアと当院のプロフェッショナルケアの両輪で口腔衛生を維持します。
よくある質問(FAQ)
Q. 矯正中は普通の歯ブラシでは磨けませんか?
普通の歯ブラシでも磨けますが、ブラケット周囲の細かい部分は矯正専用のVカットブラシやタフトブラシを併用する方が効果的です。当院では患者さまに合った歯ブラシの選び方と使い方を調整のたびにご案内しています。市販の電動歯ブラシも有効ですが、ブラケット周囲はタフトブラシで補うことをお勧めします。
Q. 矯正中に歯肉が腫れてきました。続けても大丈夫ですか?
軽度の歯肉炎(プラーク性)であれば、ブラッシングを改善することで数週間以内に回復することが多いです。ただし腫れが強い・痛みがある・膿が出るといった場合はすぐにご連絡ください。炎症の状態によっては矯正の進行を一時的に停止し、歯肉の治療を優先する必要があります。自己判断で様子を見るのは避けてください。
Q. マウスピース(アライナー)はどうやって清潔に保てばいいですか?
アライナーはぬるま湯と専用クリーナー(インビザラインクリーニングシステム等)で毎日洗浄してください。熱湯は変形の原因になるため使用しないでください。着色を防ぐためにコーヒー・お茶などの飲み物を飲む際は外すことをお勧めします。洗浄が不十分なアライナーを長期装着すると細菌が繁殖し、口臭や虫歯の原因になります。
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参考情報
- 公益社団法人 日本矯正歯科学会
- 公益社団法人 日本小児歯科学会
- Ristic M, et al. “Effects of fixed orthodontic appliances on subgingival microflora.” Int J Dent Hyg. 2008(矯正装置が歯肉縁下細菌叢に与える影響に関する研究)
- Bergstrom J, et al. “Orthodontic treatment and periodontal health.” J Clin Periodontol. 1991(矯正治療と歯周組織の健康に関する長期観察研究)
監修:院長 丸川雅弘
広島大学歯学部卒業。広島大学歯学部矯正歯科に所属し、研鑽を積む。広島タワー歯科・矯正歯科にて矯正治療中の口腔衛生管理を重視した診療を担当。毎回の調整時に口腔内チェック・フッ素塗布・ブラッシング指導を実施し、矯正と口腔健康の両立を図っている。